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パテントの流通と技術移転
発明を売買できるフリーマーケット「発明市場」がオープン
藤村靖之氏が代表を務める発明工房は、1999年9月21日、Web上で発明の売買を行えるフリーマーケット、「ひらめき!発明市場:http://www.hatsumei.ne.jp/
」をオープンした(図1)。
註:このサイトは有益な情報が満載されているが、ハッカーに狙い撃ちされてダウン状態であることがしばしばである。辛抱強くあきらめずにときどき覗いて見ることをお薦めする。
図1 「発明市場」のホームページ

「発明市場」は事業の種を持っている発明家と事業家とを結びつける場として提供され,発明家は同サイトの「発明オークション」を通じて発明の売却を行えるだけでなく、発明をもとに起業化のための支援も受けられる。利用には無料での会員登録が必要で、同社はフリーマーケット、オークションなどを通じて起業や新事業の活性化を支援する。
パテンシャルサービス
PATENTIAL(図2)も独特な特許活用データベースを提供している。
パテンシャルとは、パテント+ポテンシャルを組み合わせた造語のことで、特許の持つ潜在能力を引き出すための検索可能な特許活用データベースをいう。
活用データベースは、特許の持っている潜在能力を、従来にない視点と豊富な展開事例を平易にまとめたwebデータベースで、具体的には、特許に対して以下のようなビューを付加したものである。
1.特許情報の活用のポイントを理解しやすい内容にしたもの
2.その特許から生まれる新商品、新企画、新プロジェクトのアイデア
3.この特許から生まれる新発明への指針
そのため、パテンシャルは次のような特徴を持つ。
.特許明細書に比べて、内容が理解し易い。
.特許の豊富な展開事例が見られる。
.特許の評価ができる。
.理解しやすいため、展開アイディアの発想支援になる。
図2 PATENTIALのホームページ

開放特許の活用
前述の二つは、先駆的な一民間企業の例であるが、官としての特許流通推進事業も活発化している。
特許庁のホームページよりメニュー「特許流通」をクリックするとこの事業の全体像を知ることができる。
それによると、現在、日本には約100万件(平成11年末データ)の特許権があり、このうち実施されているのは約1/3で、残りの約2/3は不実施の権利(休眠特許または未利用特許ともいう)だという。
しかし、この不実施権利のうち約半数(約34万件)が他社へライセンスしてもよい、いわゆる「開放特許」であると推定されるという。
大企業や大学、研究機関等の保有するこうした開放特許を、中小.ベンチャー企業に移転することにより、比較的安いコストで新しいビジネスを生み出すことができれば、産業経済の活性化が期待される。
特に、TLO(技術移転機関)は、米国経済の再生および雇用創出に大きく寄与しているといわれており、わが国でも昨今相次いで設立され、大学等からの技術移転による新産業創出の原動力として大きな注目を集めている。
こうした特許流通化は同時に人の流通化を促し、ノウハウの提供や技術指導などは研究者や技術者の移動を伴い、異業種間において新しい発明や技術の融合化を創造する契機となるものと期待される。
平成13年4月に独立行政法人として新たにスタートした、工業所有権総合情報館(http://www.ncipi.jpo.go.jp/)(以下、同法人またはNCIPIと表記)は、こうした特許の流通を促進するため、
(1)人材活用などによる特許流通の促進
(2)開放特許情報等などの情報提供・活用の促進
(3)知的財産権取引事業の育成支援のための環境整備
を三つの柱(図3)にして総合的な事業を推進している。
図3 特許流通促進事業 (独立行政法人 工業所有権総合情報館のホームページより許可を得て転載)

ここでは、これらの事業の中から特許流通データベースと知的財産取引業者の育成を取り上げ、補足的に解説することにする。
特許流通データベース
活用可能な膨大な(平成11年末時点で約34万件)開放特許のうちで(財)日本テクノマートが特許庁から委託を受けて実施しているライセンス登録件数は平成13年10月22日現在40、195件あり、このデータベース(図4)へは無料でアクセスできる。
図4 NCIPI の特許流通データベース

(1)開放特許の検索(ライセンス情報検索)
最初に表示される検索画面の入力エリアの中で、スペースで区切って複数の検索後を入力すると「OR条件」となり、入力エリア同士は「AND条件」となる。
検索表示結果は、一覧、抄録、全文から選択して閲覧できる。
これと併行して検索条件の詳細設定もできる。
(2)ライセンス情報の登録
自身の保有する特許を登録するには、事前に申請者(企業または個人)のID登録の手続き(無料)が必要である。
同法人のホームページのindexで「登録」をクリックすると様式1(登録申請申し込み書)が表示されるのでプリントし、希望パスワードやデータ作成料の振り込みを希望する銀行の指定口座などを記入する。
個人の場合は、名称欄に氏名を記入の上押印し、印鑑証明書(写可)も同封して郵便(FAXは不可)で送る。
登録後、ID
を付与されパスワードとともに申請者に通知が送られてくる。
ライセンス情報作成ソフトを使用する場合、およびオンラインでライセンス情報の登録、更新のページにアクセスする場合、通知されたID
およびパスワードを使用する。
ライセンス情報をオンラインで登録する場合、提供される「ライセンス情報作成ソフト」を用いてデータを作成し、同法人のホームページに掲載のアップロード機能を使用し提出する。
提出されたライセンス情報は、チェックされた後データベースに登録される。
新規のライセンス情報が登録された場合、1件の登録につき3、000円のデータ作成料が支払われる。
知的財産取引業者の育成
産学官の技術移転を進め、企業の新商品開発や技術力向上を促進するするためには、技術移転に関与する者が不可欠であるが、欧米と比較してわが国では人数が極端に少ないのが現状といわれている。そのため同法人では、技術移転に必要な知識および経験を習得するための知的財産権取引業育成支援基礎研修を実施している。
この事業は、財団法人日本テクノマート (JTM : http://www.jtm.or.jp/)が、同法人から委託されている。
基礎研修(3日間)と実務研修(15日間)の二つのコースがあり、全国各地で開催され、どちらも受講料は無料で、申し込み先着順に受け付ける。基礎研修への応募資格は、現在技術移転の仲介を行っているか、または少なくとも将来において、知的財産権取引業者として技術移転の仲介を行う意志のある方が対象となる。
ちなみに、
今年度に各地で開催された基礎研修はすべての日程を終了しており、来年度の計画が発表されるまで当分受講の申し込みはできない。
技術移転機関(TLO)
米国では、大学などの研究成果の民間移転により、大学技術管理者協会(AUTM)の試算によると1998年度に年間約335億ドル(約3.7兆円)、28万人の雇用を創出したという。
我国では、科学技術面での国際競争力の現状と将来が深刻に懸念される状況になってきており、大学からの技術移転促進の必要性について社会的認識が高まっている。
このような状況の中で、大企業の休眠特許や大学・研究機関の保有特許を中小・ベンチャー企業に技術供与し、技術の高度化、新製品開発を推進して新規産業の創出を促進し、低迷する産業界に21世紀を担うに足る産業構造を構築しようとする産学官連携の動きが活発になっている。
1998年8月に大学等技術移転促進法が施行され、各大学の内部または外部にはこのような事業化を支援する技術移転機関(TLO)が続々と設立された。
TOL総合支援ホームページ(http://www.kankeiren.or.jp/tlo/index.html)には、TOL関連の豊富な情報が用意されている。
また、米国の代表的なOTLとして、カルフォルニア大学バークレー校のOTL
(http://otl.berkeley.edu/)(図5)やスタンフォード大学のOTL(http://otl.stanford.edu/)
などがある。
図5 カルフォルニア大学バークレー校のOTL(http://otl.berkeley.edu/)

海外への技術移転
技術移転(Technology transfer)
は、最近は、大企業の休眠特許や大学・研究機関の保有特許を中小・ベンチャー企業に技術供与するといった意味合いで使われるケースが多いが、本来、ある国が持っている技術を他国に供与することに対して主に使われていたように思う。特に、発展途上国からの要請に基づいて先進国が行う経営資源移転の一形態としてである。
先進国では、中堅企業は先端産業にシフトしているので、古くなった技術を途上国に譲るケースもあるが、近年では先進国でも有用な技術がかなり移転されている。
個別企業が取引の一つとしてライセンスやノウハウを他国企業に与えるほか、(a)多国籍企業の活動
、(b)直接投資、(c)
発展途上国への産業協力、などによって移転するケースもある。
産業協力は、国家間の制作的な要請から行われることが多い。日本貿易振興会(JETRO)
のホームページ(http://www.jetro.go.jp/top-j/)(図6)には、海外の多種多様な経済・産業情報が豊富に掲載されている。また、国際協力事業団(JICA)のホームページ (http://www.jica.go.jp/Index-j.html)では、具体的な各国からの技術協力要請案件を閲覧できる。
図6 日本貿易振興会(JETRO)
のホームページ(http://www.jetro.go.jp/top-j/)

1)「英和特許用語辞典 第4版」 飯田幸郷編集 (財)発明学会
2)発明市場のホームページ(http://www.hatsumei.ne.jp/)
3)独立行政法人 工業所有権総合情報館のホームページ(http://www.ncipi.jpo.go.jp/)
4)財団法人 日本テクノマート(JTM)のホームページ(http://www.jtm.or.jp/)
5)OL総合支援ホームページ(http://www.kankeiren.or.jp/tlo/index.html)
7)Imidas 2001