第21回
プログラマブル・コントローラ(1)
まとめ
今日では、シーケンス制御というとプログラマブル・コントロールをさすほどプログラマブル・コントローラ(PLC)が普及している。PLCのプログラムを作成するには、ラダー図がもとになるが、ラダー図はリレーシーケンスの伝統的な手法がベースにあるので、半導体ロジック回路を習得したものには、なじみにくい面がある。ラダー図による表現に馴れるのにパソコンによる設計支援ツールを利用すれば学習効果を高めることができる。本稿ではキーエンス社のラダーソフト「Ladder
Builder」(Windouws95対応)を使用し、ラダー図を入力してその動作をシミュレータで確認しながらPLCの基本回路を学ぶ。
シーケンス制御の初歩知識
シーケンス制御は、「あらかじめ定められた順序または一定の論理によって定められる順序に従って、制御の各段階を逐次進めていく制御(JISの定義による)」で、前者を順序制御、後者を条件制御と呼ぶ。
シーケンス制御は、リレーを用いた有接点シーケンスと半導体部品を用いた無接点シーケンスに分けられ、有接点シーケンスはリレーシーケンスともいう。
古くは、シーケンサはリレーシーケンサであったが、近年マイコン応用のシーケンサが普及し、一般的に、シーケンサというとプログラマブル・コントローラ(PC:ピーシー、あるいはパソコンとの混同を避けるためにPLC:ピーエルシーと呼ぶ)を指す。
シーケンスで用いられる用語で基本的なものとして、スイッチの接点の呼び方がある。
リレーや押しボタンスイッチなどの接点には、動作していないときに接点がオフ状態のものと逆のオン状態の2通りがある。前者をa接点、後者をb接点と呼ぶが、メーク接点とブレーク接点、またはノーマリーオープン(Nornally
Open)接点とノーマリークローズ(Nornally
Close)接点というように呼ばれることもある。またその図記号(通称シンボル)の表現法も各種ある(図1)。
PLCの基本構成
PLCの入力部には押しボタンスイッチ、リミットスイッチなどのスイッチ類と、光電スイッチ、近接スイッチなどのセンサー類が接続される。また、出力部にはリレー、電磁接触器、電磁開閉器、ランプ、ソリッドステートリレー(SSR)、ソレノイド、電磁弁などが接続される(図2)。
入出力部の端子には機種に応じ、固有の番号(入出力番号またはアドレス)が付けられており、プログラムによってどの入出力端子にどの入出力信号を割り付けるかが決定される。
シーケンス制御の結線図
シーケンス制御の動きを示す手段としては、展開接続図とラダー図が多く用いられる。
展開接続図で用いられるシンボルは、JIC C
0301「電気用図記号」に規定されており、IEC規格に準拠した系列1と従来より使われている系列2があるが、国際化に対応するため系列1の使用が推奨されている。
また、工作機械に対しては、平成元年にJIS B
6015-1996が制定され、定着しつつある。これは輸出で要求される国際規格のIEC規格に準拠したものである。
ラダー図は横書きした状態がはしご(ladder)のように見えるところから命名された名称で、プログラマブル・コントローラの普及とともに、在来の展開接続図に代り広く用いられるようになっている。ラダー図はリレー回路を接点のシンボルとコイルのシンボルを使って表現する。縦二本の制御母線を両端にして画く横書きがCRT表示やプリンタ印刷に適しているので広く用いられている。
リレーはコイルと接点に分解されて、特に波線で結ばれたりしていないが、デバイス番号の同じコイルに電圧が印加されるとその接点は連動して動作する。
このあたりの単純なルール自体、半導体ロジック回路になじんだ者には奇異に感じられるのではなかろうか。
いずれの場合も、時間的な経過を示す補助的手段としてタイムチャートが併用される。
シーケンス制御でも論理の基本要素はAND回路、OR回路およびNOT回路である。
論理回路と対比させてシーケンス制御の表現法で示すと図3のようになる。
AND回路の例では、PCの入力部X1とX2に接続されたa接点のスイッチが両方ともオンの場合、PLC内部でAND演算が行われ結果が出力部Y1にあらわれ、表示ランプが点灯することを表わしている。
PLCのプログラミング言語
PLCのプログラムは、ラダー図言語で設計するのが主流であるが、簡易プログラミング・ツールではニーモニック言語が使われる。
ラダー図言語はアプリケーション・プログラムを表現するためラダー図を使ったプログラミング言語で、パソコンをプログラミング・ツールとしたものではラダー図からニーモニックに翻訳してくれるので、プログラマはラダー図の作成に習熟すればよい。
なお、シンボルもニーモニックも各社で異なったものが使われており、統一されていないので注意を要する。
PLCシミュレータ
キーエンス社のラダーソフト「Ladder
Builder」の体験版(Windows95対応)が同社のホームページ(http://www.keyence.co.jp/)よりダウンロードで入手できる。
1回につき最大2時間で50回使用できるのでトータル100時間の試用が可能である。以下、同社KZシリーズのラダーソフト「LadderBuilder」で用いられているラダー図のシンボルやニーモニック表記を中心に解説する。
PLCの基本命令
PLCはリレーシーケンスの機能をカバーするだけでなく、従来のリレーシーケンスでは実現できない16ビット演算などの高度の命令を備えている。リレーシーケンスに相当するビット処理機能に限定した命令は基本命令として用意されている。
Ladder Builderで用いる基本命令の概略は以下のようなものである。
(1)LDとLDB命令(図4)
一般的にシーケンス回路の制御母線に接続されている接点を読み出すときに使用される命令で、CPUに値を取り込む。
キーエンスのLadder
Builderの場合LDB(Bはバーを表わす)が使われているが、同じ命令が三菱電機の場合にはLDI(Iはインバースを表わす)となる。このように命令のニーモニックは各社で異なった表現をしており、共通でないものもある。
LD、LDBは入力側母線に接続されている場合だけに限らず、論理ブロック結合命令ANL命令の例(図4)に見られるようにあくまでも「演算の開始」を指示する命令である。
(2)AND、ANB、ANL命令
それぞれa接点の直列接続、b接点の直列接続、論理ブロックの直列接続をする命令である。
(3)OR、ORB、ORL命令
同様に上記の並列接続の場合の命令である。
(4)OUT命令
論理演算の結果を出力リレーコイルに出力する。内部一時記憶メモリ(内部補助リレーコイル)への出力も同じ扱いとなる。
(5)TMR命令
オンディレイタイマを0.1秒の設定単位で設定する。設定数値範囲は0-65535である。例えば2秒であれば、第2オペランドに20と入力すればよい。設定単位が0.01
秒や0.001秒の高速タイマ命令も別に用意されている。
(6)DIFU/DIFD命令
微分出力命令で、入力の立ち上がり/立ち下がりで1スキャンのパルスを発生する。出力対象となる内部補助リレー(1000-1915)を第1オペランドに指定する。デバイス番号1000のリレーであれば1000と入力する。
(7)END、ENDH命令
プログラムの終了命令と全プログラムの終了命令を表わす。プログラムの最後の2行は形式的にこの命令を書く。
以上の命令のうちタイマ命令(TRM)と微分出力命令(DIFU、DIFD)に習熟することが初心者にとってキーポイントと思われる。
(つづく)